宮澤 喜一 (2005/11/30)

  違和感はあったが、

  一方でそれが国民生活なり国の考え方を規制するとともに、

  他方で我々が憲法というものを育て、

  使い込んでいった部分があると思うんですね

     -     -     -

  裁判所が判例によってこの憲法を、

  我々の納得がいきやすいものにしたことです

     -     -     -

  変えるための国民的なエネルギーを思うと、

  そういう努力はあまり有益ではないという気がする。

  つまり、

  改正のためのコストを払って得るベネフィット(利益)は、

  実はそれほどないんじゃないか。

     -     -     -

  私など、

  それだけのことをする値打ちがはたしてあるのか

  と思っている

   -     -     -

  自分たちの憲法ですから、

  変えられないわけはなにもないけれども、

  全体をそう窮屈に、

  規範的に考えなくてもよいと思いますね

     -     -     -

  我々のできる限界を明らかにしたわけです。

  恐らく世界には、

  日本がそういう憲法を持った国だというのを

  初めて知った人たちが多いのではないでしょうか

     -     -     -

  国連が決議したら、

  日本は外国で武力行使をしていいのか。

  残念ながら私は、

  今の国連にそれだけの信用を寄せ、

  権威を認めることはできないと思う。

  だから、

  集団安全保障と言われても、

  日本自身の自衛の問題としてとらえないと、

  どこで何をするのか、

  とめどもなくなる心配がやっぱりあります

     -     -     -

  私は、やっぱり、

  同質性の高い民族が長い間一緒に暮らし、

  運命を共にしている連帯でいいのではないかと思います。

  それはいい悪いというより、

  そうだから、

  そういう連帯があるんですね

     -     -     -

  私は昔から

  市民という言葉にフランス革命的なものがある、

  という気がしています。

  日本で市民、市民と言うと、

  何となく民族とか歴史の運命共同体を

  ちょっとはずそうとしているなと思う。

  あえてポピュリズムとは言いませんけどね(笑い)、

  ややそっちの方にね……。

  だから、

  市民という言葉は

  私もあまり使いたくない

     -     -     -

  冷静に考えれば大した改正じゃなかった。

  それなのに、

  安保がああいう大きな騒動になったのは、

  その前から警職法改正の騒ぎがあって、

  岸さんによる一種の戦前回帰路線というものが、

  国民には非常に権力主義的に見えて反発を招いた

     -     -     -

  私は、

  安保騒動というのは大きな見当違いだったという説なんですよ。

  岸さんの「回帰路線」への反発はともかく、

  先ほどもいったように

  条約の改正はたいした内容ではなかったのに、

  大騒ぎした……

     -     -     -

  フランス人は国民投票が好きですが、

  英国人は反対です。

  英国の政治家には、

  国民の複雑な利害の中から妥協を見いだすのが

  我々プロの政治家のつとめだという

  伝統とプライドがあります

     -     -     -

  いつもは

  「命令に従え」

  と言われているのに、

  銃を使うときだけは

  「おまえ一人の判断でやれ」

  という状況は、

  隊員にとってはつらかった

     -     -     -

  日本人はポーカーが下手だそうですね。

  我々はブラフとか脅迫ということは、

  苦手なんじゃないんだろうか

     -     -     -

  ナイ自身、私にしばしば

  「中国っていうのは

   敵視すれば敵になってしまう。

   だから我々がそういう

   不用意な態度を取ることは適当ではないんだ」

  と言ってましたが、

  その通りだと思いますね

     -     -     -

  選挙区の都合さえつけば、

  もともと一緒になっていい政治思想の人が多いのではないか

     -     -     -

  私はそもそも自民と新進がなぜ分かれたのか、

  今でも分からないのです。

  当時の責任者として

     -     -     -

  改憲か護憲とかいうただ一点で

  二大政党に整理されてしまうことは、

  日本のために残念だと思うのです